第40話 「お客様は神様ですか?」-業績アップを阻む営業での何気ない一言
---営業現場における謙虚さとは何でしょう?謙虚は美徳といわれる日本。右肩上がりが当たり前の時代では売り手の気持ちに関係なく、遜ることでお客を気持ち良くすれば契約が取れたものです。さて現在はどうでしょう?売り手が自信を持たない商品が売れますか?自信のなさはどこに表れますか?
今日は、日本の営業現場に蔓延する”させていただく症候群”についてです。言葉に表れる話者の内面。無意識に使っている言葉を変えて行動を変える。営業成績をアップさせ、その先の人生をも変える。あなたも言葉を見直してみませんか?---
「いろいろ営業をさせていただいているのですが、案件がなかなか決められず、しばしば社長にトップセールスをお願いすることになってしまいます。最後まで自分の力で成約したいです。私のトーク見てもらえませんか?」
工作機器メーカーで営業を統括するK部長からのご相談。
「いろいろ」「なかなか」「しばしば」とその具体的な内容はKさんにしか分からない言葉が含まれています。
くだんの経営コンサルタントなら
「いろいろとは具体的に何をしていますか?」
「なかなかとは確率にするとどれくらいですか?」
と突っ込むところ。
当然、私も同様の質問はします。
そのうえでコミュニケーション力向上による営業強化を専門とする私が着目したのは「営業させていただいている」の「させていただいている」の部分。
「『営業をさせていただいている』とはどういうことですか?」
とまず相手が自由に答えられるオープンクエスチョンで問いかける私にKさんは
「、、、、、、」
とあっけにとられながら口はへの字に曲がるだけ。
あまりのだんまりに私が
「営業している, とどう違うのですか?」
とさらに問いかけると
「同じと言えば同じですが、、、『させていただく』のほうが丁寧な気がして、、、」
「それはご自身で決めてそうしてますか?」
「さあどうだろう。同僚、同業者、周りのみんなが使っているし、テレビでも良く見聞きするし。なんとなく使ってしまってます。」
「使っていてどうですか?」とさらなるオープンクエスチョン。
「なんか下手に出てるような感じがします。せっかくの商品なのに自信なくセールスしてるような。『営業している』の方が胸を張れるし、気分も明るいですね。」
文化庁によると「させていただくの」正しい使い方は以下の条件を満たした場合とされています。
(ご参照 → keigo_tousin.pdf (bunka.go.jp))
①相手側又は第三者の許可を受けて行い,
②そのことで恩恵を 受けるという事実や気持ちのある場合
営業は売り手、買い手が対等な世界。
市場で自社商品を宣伝し販売するということに市場の許可はいるはずがありません。
また契約は自分に恩恵はありますが、相手にも当然恩恵が与えられます。
営業現場ではセールスをしかける側とそれに応じる側が存在はしますが、そのどちらかが上でもう一方が下ではありません。両者は対等な関係なのです。
この前提を無視して必要以上に遜る。
胸を張ってセールスしない営業マンに買い手は無意識のうちに不安を感じます。
いい商品だとは頭で理解していても「この会社から買って大丈夫だろうか?」と。
その点、私はオーナー社長が謙虚の押し売りともいえる「させていただく」セールスをする現場に立ち会ったことはありません。
自社商品は自慢の我が子のような存在。
不用意に下手に出ることが会社を傾かせることを常に感じているということ。
そして使う言葉によりそのリスクが生じるということを理解している。
言葉と行動は表裏一体の関係にあり、それはコミュニケーションの相手にいやがおうにも伝わってしまうということです。
その昔、「お客様は神様です。」という名言がありました。この名言が迷言となり日本中に広がり、営業の場にとどまらず、日常の会話でも散見する”させていただく症候群”へと変異しました。
弊社では謙虚の押し売りと定義するこの”させていただく症候群”、このほか自分の思いを伝えるのは憚られるというマインドの表れ”いただければ病”など無意識に使ってしまう自己肯定感を妨げる言葉が日本中に蔓延しています。
(第3話「○○いただければ。」で一体どうなるの? →「○○いただければ。」で一体どうなるの? | コミュニケーションコンサルティング (com-cons.com)
あなたが無意識に使っている言葉を見直しませんか?
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