第10話 営業プレゼンテーションのゴール

 先日営業帯同研修をしたKさん、A3で3枚ものしっかりした販売資料を作成持参。彼の商品を導入するだけで顧客には数億円の利益増加効果があるとのこと。

 同席した彼の上司である社長が会社の概要を説明し、彼のプレゼンテーションとなりました。

あなたがKさんならどういうプレゼンテーションをしますか?

①持参した販売資料を説明

②持参した販売資料に無いことを説明

③持参した販売資料と販売資料にないことの両方を説明

Kさんがとった作戦は①。Kさんはエネルギーを注ぎ丹精を込めて作ってきた販売資料を1ページ目からたっぷり時間をかけ丁寧に説明。

 自分が作成した販売資料は可愛い我が子のようなもの。顧客にその良さを理解してもらいたいその“親心”も十分に理解できます。実際多くの営業マンがKさんのように持参した販売資料の説明に終始する現場に立ち会ってきました。

 ここでのポイントはKさんが何をゴールとしてプレゼンテーションするかです。Kさんのプレゼンテーションのゴールは?

 彼が営業マンという立場である以上、Kさんが顧客の所を立ち去った後、顧客がその販売資料を見る、そして考え、もう一度Kさんにコンタクトを取るということ。相手の行動を促すところまでがゴールなのです。

 しっかりと作り込まれた販売資料はKさんが顧客の所を立ち去っても顧客のところに残り続けます。働き続ける可能性があるわけです。

ここで可能性といったのはあくまで顧客がその内容に関心を持っていればという前提があるからです。そう、Kさんは顧客に「もう一度Kさんに会いたい」というキーを回し販売資料というエンジンを動かしてもらわなければならないのです。顧客にこのキーさえ回してもらえればあとは販売資料というエンジンが勝手に動き始めます。

 ではどうすればキーを回してもらえるのか?

 Kさんは「もう一度Kさんに会いたいな」と思わせるしかない、即ちKさん自身を売り込むしかないのです。商品を売らずセールスマン自身を売り込むことについては過去の提言(→第8話 ネット時代に必要なセールスマンの資質とは?)でも申し上げた通りです。

 そうはいってもここで①の持参した資料を説明してもいいのでは?という皆さんからの疑問の声が聞こえてきます。どうしても説明したい場合はアメリカの思想家エマーソンが言っていること、「(販売資料に関して)どうしても言いたいことを言いなさい」に従ってください。販売資料がしっかりしていれば説明するのはそのどうしてもいいたいことだけで十分です。そこにはあなた自身の信念、価値観などの人となりが表れ、必ず顧客に伝わります。

 オンラインが発達し、ルートセールスは商品の説明から注文まで全てオンラインで済む時代。そんななか新規開拓では以前にも増してリアルな世界で顧客との肌感をいかに高められるかが問われています。商品をプレゼンテーションせずに商品を売る時代が益々本格化してきています。