第55話 究極のセールスー一流ブランドが実行する顧客の無意識を信じる方法とは?
---ブランド店に行くと感じるあの特別な雰囲気は何なのか?売っている商品は一流、接客も一流。しかしこれらだけでブランドが築かれているのではありません。多くのブランド店では意図的に商品を売ろうとしないのです。なぜ意図的にセールスしないことが売上アップに繋がるのか?今日はこの種明かしをします。---
「最近うちの店員がちゃんとセールスできるようになったんです。
お客様が何かしらの商品を最低でも一つは買ってもらえるようになったんです。
でもさらにもう一点買ってもらうことができないんです。
うちはいいものを揃えているのだから、もう一点、お客さんにセールストークをしようと発破かけているんですが。」
セレクトショップを経営するI社長のボヤキです。
【本物を売る店の本物のセールス】
先日訪れた郊外のアパレルショップはI社長とは全く逆の店舗運営をしていました。
ジーンズなどのアメリカン衣料を中心とした同社は業界では知る人ぞ知る存在。
販売員の商品に関する知識、自社商品への自信は相当なもの。
商品は素材も製造方法も徹底的にこだわったいわゆる本物。
割引セールスを一切することなく、来店客も同社の「この商品が欲しい」という感じで来店するとのこと。まさにブランドです。
【セールスしないセールス】
同社では来店客が商品購入を決めた後、店員がスーッと顧客の前からいなくなります。
「ほかにご入用のものはありますか?」はもとより「包みますので店内ご覧になってお待ちください。」の問いかけさえありません。
実際、わたくしが訪れた際も、販売員は商品を会計係に渡したら店外に出て、駐車場で来店客とクルマ談議に花を咲かせていました。
【顧客とともにいるとは?】
なぜ同社がそうしているのかあなたは分かりますか?
それは顧客の無意識を信じているからです。商品を購入するかを顧客の無意識に委ねているともいえます。
「ほかに何かいりますか?」と言われれば「これを買いに来た。」と反論したくなりますし、
「見ててください」と頼まれれば、「もう買うのは決まった。」や「早く会計したい。」と顧客はつぶやくことでしょう。
【顧客を自由にすることの意味】
これに対し店員が会計のために目の前からいなくなるとどうなるのか?
顧客の無意識が目覚め始めるのです。
無意識とは身体の感覚です。
目には入ってくるものは無意識に入ってきますし
店内の匂いを意識して嗅ごうとはしないはず。
顧客の目にふと(無意識に) 留まった商品に、
顧客の無意識センサーが”これいいな~”と反応し、
”どういう商品だろう?”と意識がサーチを始めるのです。
そして商品を広げたり、タグを読んだり。実際に触り始めるのです。
その姿を販売員がすかさずキャッチし、通常のセールスを再開するという具合です。
【無意識を意識する意味】
商品購入を決めた顧客に「さらにこれはいかがですか?」と間髪入れず追加セールスをするのは、むしろこの顧客の無意識センサーにとっては妨害電波にしかすぎません。
商品購入を決めた顧客に追加購入を願うなら店内の商品配置などを顧客の無意識が反応するように再考する方がはるかに効果的です。
納得して商品購入を決めた顧客は、その商品を使う場面を必ず無意識のうちに映像化します。
そしてその使い心地を知らず知らずのうちに想像するものです。
(ご参考 商品プレゼンテーション-モノをセールスするのではない!あなたがセールスすべきものとは? | コミュニケーションコンサルティング (com-cons.com) )
その際、顧客の視線はどう動くのか?身体をどの方向へ向けるのか?
顧客の追加購入を促す商品陳列などのヒントがこんなところにもあるのです。
本物を売る本物の接客は顧客の無意識を信じるということにほかならないのです。
コミュケーションコンサルティングは本物を目指す貴社をサポートします。