第33話 リーダーのコミュニケーション‐本当の質問力を支えるもう一つのもの

一昨年ある懇親会で知り合った人材紹介業のS社長が社内での一幕を語ってくれました。

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「社長、チームの運営があまり上手くいってません。」

「あまり上手くいっていないのですね。俺に出来ることがあったら遠慮せずに言ってくれ。」

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「あまり上手くいってないと言われたから市原さんに言われたとおり間髪入れず

『あまり上手くいってないのですね。』とバックトラック(伝え返し)をしたのです。

(→第6話オウム以上のオウム返し(バックトラキング))

オウム以上のオウム返し(バックトラッキング)

それで社長としてサポート出来ることは何でもしたいとの思いから

『俺にできることがあったら遠慮せずに言ってくれ』」と反射的に言葉を重ねたのです。

でも、部下の反応が今ひとつ。下を向いてデスクに戻っていってしまったのです。」

今度はS社長が俯き加減で私に

「私のコミュニケーション、どこが悪かったんでしょう?」

「S社長、伝え返しが出来たことは良かったですね。部下の方も表情が変わったのでは?」

「ええ、目がパッと開き、顔色が明るくなりました。

でもその後力づけの言葉をかけるや否や『またか?』という感じで下向いてしまいました。」

「S社長、部下の方はあなたにどうしてもらいたかったのでしょう?」

「えっ?私のサポートが欲しかったのでは?、、、」

「あなたは社長です。部下のサポートは当たり前です。部下も社長のサポートを当然という前提で働いてます。それでも敢えてあなたに語る。その訳はなんでしょう?」

「、、、僕に実情を知ってもらいたかったかも?」

「そうです。まず実情を聞いてもらい、解決方法をアドバイスしてもらう。

それでもだめそうならあなたの力を借りる、ということではないでしょうか?」

「しまった、、、なぜ質問しなかったのだろう、、、」

「S社長、部下の方の発言のどこに反応すべきでしたか?」

「『あまり上手くいっていない』ですね。

『上手くいっていない』だけでもその意味するところは人によってまちまち。

それに加え『あまり』までついている。

まさに市原さんがいつも仰っている世界は人の数だけあるの良い例です。」

(→弊社代表メッセージ 【人の数だけ世界が世界がある】)

初めての方へ

「さすが、そのとおりです。『あまり』も『上手くいってない』も人次第です。

本人は自分の世界を無意識のうちに自分の“辞書”を使い話します。

ここで聞き手は相手が意味する上手くいく、上手くいかないとはどういうことなのか、を質問する必要があるのです。

また、『あまり』とはどの程度なのかも聞き取らなければなりません。」

「おっしゃる通りです。今度からはもっと会話のアンテナを高くして、感度高めます。」

どうすればアンテナを高くして、感度を高められるのか?

これにははっきりとした正解があります。

自動車の運転を覚えた時を思い出してください。まずブレーキを踏み、ミッションをニュートラルへ入れ、そしてキーを、、、

この一連の動作は運転に慣れていない当初はかなり意識する必要があったはず。

でもそれもすぐ無意識に出来るようになったのでは?

コミュニケーションの向上にもこの”ブレーキを踏み、ミッションを、、、、キーを、、、”に相当するテクニカルな技術の獲得が必要なのです。

これを獲得することで、他人が見て、聞いて、感じている世界を無意識のうちに共有できるようになります。リーダーとして持っていなければならない資質、すなわち共感力を自然に身に付けられるのです。

コミュニケーションの向上には時として意識的にテクニカルな技術を獲得することが必要となります。

コミュニケーションの背後にある「なぜ」伝えるかと同様に「どのように」伝えるかも極めて大切な要素です。

弊社コンサルティングにてこの「どのように」を獲得しませんか?