第16話 その第一声、誰のため?
Aさん「お忙しいところすみません。」
Bさん「ご機嫌いかがですか?」
どちらも電話セールスの冒頭に語られるお決まりのフレーズです。
あなたはどちらのフレーズをよく使いますか?
いずれも相手のことを気遣うように聞こえますが、その意図することは180度異なります。
両者の違いは、
Aさんの発言は矢印が自分に向いており、
Bさんの発言の矢印は相手に向いている、
ということ。
では、この発言の矢印とは一体何なのか?
発言がなされた結果、ずばり会話のどちらが安全、安心を得るかということです。
Aさんは『あなたが忙しいかどうかは分かりませんが、仮に忙しくて私の相手をする時間がなくてもどうか怒らないで下さい。』と言い訳を抱きながら発言。この場合安心、安全を得ているのは発言の主体のAさん。
これに対してBさんの関心は会話の相手に向いており、「ご機嫌いかがですか?」と問われた相手側にどう反応するかのフリーハンドが与えられています。
つまり安心、安全を得ているのは発言の客体である相手側なのです。相手側が安心、安全を得た結果、そこにはいわゆるラポール(この人と時間をともにすると心地よいという感覚)が形成されます。
二人は同じ絵を見て、同じ世界にいることが可能になります。その後は相手と共通の話題などを探りつつラポールを深めれば、その営業電話は、飛び込み営業電話の場合は特に、理想のファーストコンタクトになるのです。
顔の見えない電話による営業ではまず相手に安心、安全を与えラポールを形成することが絶対不可決なのです。
「終わりよければすべて良し」と楽観主義が王道とされがちな営業の世界。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」ととにかく量で勝負と闇雲に突っ走りがちな営業の現場。
しかし始まりが無ければその終わりもありませんし、下手な鉄砲も引き金の弾き方を知らなければ絶対に当たらないどころか暴発するリスクさえあります。
貴社の営業は電話での何気ない第一声で、今後長期間の取引が始まるかもしれない大切な潜在顧客を失ってはいませんか?