第61話 エクゼクティブ必携の評価基準!ー部下をどう育て上げるのか?
--エクゼクティブの役割は組織をリードするだけではありません。もう一つ大きな役割は次代のリーダーを育てるということ。単に部下を育てるだけでなく一流のリーダーに育て上げる。きょうはこの役割に着目いたします。---
「市原さん、先日社長に呟かれました。『来年あたり君も役員になってもおかしくないよ。君の後任は育っているよね。』と。私の部には5つの課があるのですが正直どの課長も能力的に甲乙つけがたいのです。」
「能力的に甲乙つけがたいのですね。5人の課長さんはどういう方々ですか?」
「どういう人と言われても、、、」
化学品会社で営業部を率いるAさんからのご相談です。
【人を見分けられない‐エクゼクティブが陥りやすいミス】
多くのリーダーは自らの職責を全うすることに注力をします。組織人である限りこのことはあまりにも当たり前です。
しかし、その一方で忘れがちなのは部下を自分の後任にまで育て上げること。
部長クラスにまで昇進するとあと一歩で役員というポジションが見えてきます。ついつい出世という“我欲”が優先され、後任部長の育成が疎かになりがちです。
上記A部長もこの例にもれず、営業部の実績作りに奔走していた様子。
部内の統一感を維持するため配下の課長5人を平等に評価することを重視してきたとのこと。
【能力以上に大切なこと‐人間の意識レベルとは?】
人間が自分自身に対して持つ意識レベルには大きく分けて
1.自己認識・アイデンティティ(私は〇〇である)
2.信念・価値観(私は△△を大切にしている)
3.能力(私は□□が出来る)
4.行動・環境(私は××で◇◇をする)
があります。
この4つの中で一番影響力があるのが1.自己認識です。アイデンティティともいわれ、自分に対する認識が2.信念・価値観以下のすべてをコントロールします。
メジャーリーガー大谷選手は
1.アイデンティティ(私は二刀流である)
2.信念・価値観(私は投げることと打つことを大切にしている)
3.能力(私は160kmのボールを投げ、年間数十本のホームランを打てる)
4.行動・環境(私はメジャーリーグで二刀流としてプレーしている)
この例からわかるように私は二刀流であるというアイデンティティがなければ二刀流大谷翔平は誕生していないのです。
より分かりやすい例を挙げるなら、仕事そっちのけでギャンブルに現を抜かしている夫が
1.夫が妻の妊娠を機に(父親というアイデンティティの誕生)
2.家族を支えるために(信念・価値観の創出)
3,4.仕事に没頭し始める(能力 行動・環境)
というのがこれにあたります。
【部下のアイデンティティと信念・価値観‐エクゼクティブが持つ視点】
部下を評価する際、業務である限り業務上の能力、行動・環境という点からなされなければなりません。なぜなら人が持つアイデンティティ、信念・価値観はあくまでも個人特有であり、他人のそれらとの間には優劣がないからです。
A部長が言うとおり能力、行動・環境(この場合実績)で部下である5人の課長に差がないのであれば後任に誰を推すのか悩むのは無理もありません。
ではA部長がこの難問を解く鍵はどこにでしょうか?
【意識して見る、そして観る】
やはり回答は上記人間の意識レベルにあります。
各課長が仮に部長となったなら
1.どのようなアイデンティを持とうとしているのか
2.どのようなこと(信念・価値観)を大切にして部を運営していくのか
という視点から部長候補である5人の課長を見る必要があるということです。その際、それらのアイデンティティ、信念・価値観のもと実際に部全体が
どのような組織になるのか、具体的な社内のイメージ、聞こえてくる社員たちの会話や雰囲気などを意識的かつリアルに想像しなければなりません。
(ご参考 第13話 コミュニケーションコンサルティング | コミュニケーションコンサルティング (com-cons.com)
この作業を幾度となく繰り返し(部下へのヒアリングなどもして良いでしょう)たうえで、最適な人選をし、後任へ育て上げればよいのです。
「市原さん、意識レベルですね。よく理解しました。その視点から課長たちを観てみます。ありがとうございました。」
「Aさん、ご自分のアイデンティティ、信念・価値観の確立も忘れないでくださいね。」
コミュニケーションコンサルティングではあなたのアイデンティティ、信念・価値観の確立をサポートします。
エグゼクティブコーチング〜自己実現を目指す経営者のためのコーチング〜| コミュニケーションコンサルティング (com-cons.com)