第49話 コミュニケーション力アップ⇒リーダーがすべき本物のフィードバックとは?
---部下に対しフィードバックするときは何を注意しますか?常に部下の仕事ぶりを見ている上司のあなた、フィードバックは定期的な人事考課から日常の何気ない会話のなかでもなされます。今日はフィードバックする際にパワハラとならないために気をつけることについてです。また、上手なフィードバックはチームの成績を向上させるものです。---
「市原さん、うちの課長が部下へパワハラしているらしいのです。周りの人に聞いてみても単なる教育だという人もいるし、私自身パワハラかそうでないかの境目がわからないです。よく言われる本人がハラスメントを感じているかどうか以外に何か良い判断材料はないですか?」
ホテル運営会社K部長からのご相談。
いまやハラスメントという言葉を知らないひとはいないでしょう。パワハラ、セクハラ、モラハラにマタハラ。→嫌がらせ(ハラスメント)嫌がらせ - Wikipedia。
多くのハラスメントはコミュニケーションがなされるときに引き起こされます。
K部長が疑問を抱くようにパワハラの定義は被害者がそう感じるかどうか以外に明確なものはないようです。
リーダーである上司の役割は部下との間に円滑なコミュケーションを取ること。パワハラを恐れて部下とのコミュニケーションを避けているようではリーダー失格と言わざるを得ません。
・フィードバックでは事実だけを伝える
上司が部下に対して行う大きな役割にフィードバックがあります。
部下の仕事ぶりを観察し、伝える。当たり前すぎるこの作業でもパワハラは発生することがあります。
フィードバックがなされる時、上司から部下へ伝えられるものは事実だけでなければなりません。
こういうと、「事実だけ?当たり前じゃないですか」という声が聞こえてきそうです。しかし、現実に事実だけを伝えるフィードバックがなされているのは極めて稀なのです。
では事実だけとはどういうことでしょうか?
事実とは客観的な出来事や成績を表すのであって、その出来事や成績への評価者である上司の価値判断は含まれてはいけないのです。
パワハラと思われるフィードバックはどういうものとは?
【価値観、信念を押し付けるフィードバック】
【上司の感情が込められたフィードバック】
では詳しくみていきましょう。
【価値観を押し付けるフィードバック】
多くの上司が
やり方がダメだから、気持ちが入っていないから、こういう結果になっている
とフィードバックをしています。
事実のフィードバックというより上司のものの見方とその背後にある価値観の押し付けになっています。これはパワハラです。
【感情が含まれるフィードバック】
この他に上司の怒りや失望などの感情が声に乗ってしまうこともあります。気持ちの高ぶりから早口になり部下の表情に見向きもせず、意見を聞く耳を持つことなく一心不乱に捲くしたてる。こうなるとフィードバックの域を完全に逸脱しています。当然こちらもパワハラに該当します。
・事実だけを伝えたら、次には質問
やり方がダメという前に
「どういうやり方をしている?」と聞くべきです。
気持ちが入ってないと決めつける前に
「どういう気持ちで仕事をしていますか?」
と聞いてください。
これらを質問することで仕事のやり方そのものに改善の余地があることが判明することもあるでしょう(行動レベルの問題)。また本当は違う職種の仕事をしたいという希望を部下があなたに打ち明けるかもしれません(価値観レベルの問題)。
前者であれば正しいやり方を教えれば済みますし、後者であれば部下の能力など諸条件を勘案し、今のまましばらくその仕事を続けるのか職種の変更などを考えるのかを勘案することになります。
貴重な戦力を失うことは大きな痛手ではありますが、部下の人生を第一に考えることこそが真のリーダーに不可欠な資質です。
・フィードバックで感情を込めても良い場合とは?
実はフィードバックの際、感情を込めても良い場合があります。
それは上司であるあなたが部下の大切にしている信念・価値観に感動した場合です。
顧客の問い合わせに迅速に対応した場合には
「顧客を大切にするその熱い思いには脱帽です。心を震わされた。」とか
顧客が納得するまで何回も説明を重ねた場合には
「面談で何回も説明を続けた粘り強さには感心した。チームのみんなに見て欲しいくらいだ。」
のように、部下が大切にしている信念・価値観が部下のため、チームのため、そして顧客のためになると上司であるあなたが感じた時は是非それに言及してください。
仮にその段階ではまだ部下の成績、会社の業績に繋がっていなくてもそれに触れて下さい。あなたが感動したということはあなたのチーム運営を必ずサポートしてくれます。
そしてあなたの信念・価値観を交え、部下たちにシェアを積極的にして下さい。これこそあなたの部下たちに対するフィードバックなのです。
そのプレゼンテーションによりあなたのチームの輪はより強固、頑丈なものなるでしょう。