第18話 見るそして観る。-営業マンが営業でまずすべきこと-

「商品の説明にお客様が納得して取引をしてくれるのですが、お客様とはそれ以上の関係になれず、心と心のリレーションが築けません。」

ご相談にいらした銀行で営業次長を務めるJさん。

営業をしながら部下の育成もこなすいわゆるプレイングマネージャー。

毎年会社から課せられた予算は必ず達成しているというからくだんの営業マンが聞くと何とも羨ましい話。

しかし、Jさん、目の前に立ちはだかる予算という壁にヒーヒー言っている部下が顧客と仲良くプライベートの話をしているところを見るにつけ思わず何故自分にはそれが出来ないのかといたたまれなくなりご相談に来られました。

Jさんといろいろ「会話」するにつけ、まず気になったのがよくしゃべるということ。

自分の置かれた会社での状況から顧客とのやり取り、上司からの評価と将来のキャリアプラン、果てはご子息の進学まで一気呵成に説明。その間目線は終始上を向き、まるで何かを想像しているかのよう。

「Jさん、あなた営業中お客さんのどこを見て話していますか?」

「どこって、、、、、」

私のシンプルなこの質問にJさんは思わず絶句。

そう、Jさんは会話をしたつもりになっているだけで、会話の相手は心の中の自分の姿であり、丁寧に説明する自分の姿に酔っていたのです。

私が上で会話に「」をつけた理由はここにあります。彼にとって会話でも相手には全く会話になっていなかったのです。

Jさんは説明上手な典型的なテープレコーダー型営業マンだったのです。目の前にいる相手を観ることなく、また見ることさえせず一心不乱にしゃべり続ける。

人間は目の前の相手をよく観察することで瞳孔が無意識のうちに開きます。この開いた瞳孔を相手が見るやいなやこれまた無意識のうちに「この人は私に関心がある。」と安心する。

営業にとって絶対に必要なラポールが形成された状態が発生します。

相手をよく見る、そして観察しながら会話をすることで相手が見ている世界に入り、同じものを見て、同じ音を聞き、同じ感じを共有する。

そこでJさんのテープレコーダーぶりを改善すべく私が出した課題が“無声ドラマ”視聴。

音声を消し、TVドラマを見る。音を消してひたすら登場人物を見る、そして観る。

弊社コミュニケーションコーチングプログラムとともにこの作業を繰り返すことでJさんは顧客との心地よいリレーションを構築しただけでなく、部下の成績向上という嬉しい副産物も得ることが出来たとのこと。

そこの営業部長さん、お客さんを見ることなく語り続ける自分の姿に酔っていませんか?

そこの社長さん「オレについてこい」とその背中を見せるだけで社員の世界をどのように観ているのですか?

そこの政治家の先生、あなたが創る社会を語るとき有権者は何を見ているか確かめながら語っていますか?

まず見る、そして観る。 営業マンのみならずリーダーが初めにすべきことです。