第23話 本当のコーチング-部下の信念を知っていますか? 

「S課長、部長になったとしたら、どんな部長になりたいですか?」

「私にはみんなから信頼される技術力がないからそんなこと想像できません。」

来年度に備え、多くの企業で組織変更とそれに伴う人事異動を検討し始めているようです。

そんな折、実績、経験、人望全てに及第点のS課長を商品開発部長に昇進させようと面接したものの、肩透かしを喰らってしまい、その後の対応に苦戦するシステム会社のK社長から相談が入りました。

新商品開発を新たな中期目標に据えた同社にとってS課長ほどの適任はおらず、経営者として是非ともこのタイミングで彼を昇進させたいとのこと。

「でもどんな部長になりたいのかのイメージくらい知っておきたいじゃないですか?だからどんな部長になりたいか?と聞いたわけです。でもなんか答えをはぐらかされちゃって。市原さん、何か良いヒントをくだれませんか?」

K社長、先日購入したコーチングの本に倣い意気揚々と

「もし、部長になったら、」と「もし」「仮に」をつけて質問を重ねてみたもの反応はさっぱりだったとのこと。

あなたがK社長ならどうします?

①社長権限を盾に無理やり彼を部長に昇進させる

②部長昇進を諦め、みすみす業績アップのチャンスを放棄する

③もう一度S課長と話し合いの機会を持つ

本コラムをいつもお読みの方にはもうお分かりだと思います。そう正解は③

では次回面談では何を聞くべきでしょうか?

彼のいう「技術力」とは何か?「みんな」とは誰か?

ここからが最も大切なことですが、S課長には技術力がないと部長になれないという思い込み、すなわち信念があるということ。

技術力がないと「なぜ」部長になれないのか?

を聞く必要があります。

なぜ「なぜ」を訊く必要があるのか?

S課長に技術力がないと部長になれないという信念があるかぎり、無理やり理想の部長像を語らせたところで何の意味もありません。本当の部長像は出てこないでしょう。

人がするすべての行動には意識するしないにかかわらず信念(以下ビリーフ)が潜んでいます。

なぜ朝起きたら歯を磨くのですか?

なぜその道を使って通勤をしますか?

なぜその商品を商品化させたのですか?

なぜその政策の必要性を訴えるのですか?

全て回答できるはず。それらがビリーフです。いくつものビリーフが私たちの行動をコントロールしています。必要なビリーフもありますが、なかには本当に必要なのかと疑ってしまうビリーフもあります。

そう。S課長のビリーフを聞き取り、S課長自らにそのビリーフを脇に置いてもらう、あるいは放棄してもらい、「自分は部長にふさわしい。」という新たなビリーフを書き加える作業が絶対必要なのです。

これが出来ればS課長は自らその部長像を語り始めるでしょう。

目をパッと見開き、胸を張り、会社と自分の未来をしっかりと見据えた活き活きとしたS新部長の誕生です。

まさに貴社の業績アップの可能性が開かれた瞬間です。

上司であるリーダーは部下のビリーフ、部下が大切にしていることを知っている必要があります。

また不要となったビリーフの書き換えはリーダーの問いかけで部下自らによってなされなければ効果はありません。

このビリーフの書き換えのテクニックは市井のコーチング本をまねるだけで一朝一夕に身に付けられるものではありません。

獲得への早道であるそのポイントは弊社コンサルティングにて。