第46話 コミュニケーションは質にこだわれ!-【日報】ならぬ【分報】に潜むリスク
---日本でもテレワークが定着してきました。社員同士が顔を突き合わせず仕事する状況は今後もより浸透していくことでしょう。そんななかコミュニケーション不足による弊害から分単位でのオンラインレポートを社員に課す分報というものが登場しています。その是非とは?---
「市原さん、うちの会社でも*テレワークが定着してきました。嬉しい反面、コミュニケーション不足の声も一部から湧き始めました。そのため、分報を導入しようと思っています。プライベートなことを含め常時何を囁いてもいいんですよ。コミュニケーションの量が増えますから同僚に会えないことによる疎外感も軽減できますしね。」
*テレワーク普及率:総務省|令和3年版 情報通信白書|テレワークの実施状況 (soumu.go.jp)
古くから付き合いのある自動車販売会社を営むT社長からのご相談。
ずばり申し上げます。
コミュニケーションは量ではなく質です。
習うより慣れろ!ではなく、慣れるより習え!です。
なぜか?
私たちはこの世に生を受けたその瞬間からいろいろな経験をします。
その都度、見たもの、聞いた音、そして感じたことを言葉や文章を通じ、無意識にそれらの経験に意味づけをします。
海という言葉を聞いた時、あなたはどのような海を頭に浮かべますか?
サーファーが浮かぶ湘南の海を思い浮かべる人もいれば日本海の荒波を思い浮かべる人もいます。
子供のころ犬に吠えられ恐怖を感じた経験をした人は大人になっても犬の鳴き声(たとえそれが仔犬であっても)を聞いたとき、無意識うちにその体験を思い出し恐怖を感じることがあります。
彼は子供のころの経験を通じ”犬は恐い”と決めて、その決め事を持ち続けているのです。
人生は日々の経験と言葉を通じた、それら経験に対する意味づけの連続ともいえるのです。
つまり同じ出来事に対する見え方、考え方、感じ方は人によってまちまちです。
人の数だけ世界があるのです。
(ご参考弊社代表挨拶 「人の数だけ世界がある」
初めての方へ | コミュニケーションコンサルティング (com-cons.com) )
この大前提に立つと言葉の意味が人によってまちまちなのにコミュニケーションの量を増やしたところで、それぞれの人が見ている、聞いている、そして感じている世界が共有されるかどうかは極めて疑問です。
各人の世界がいつまでも交わらないリスクを回避するためには
「海とはどこの海ですか?」と質問することが必要なのです。
しかし、テレワーク中に「分」単位でこれをすることは出来るでしょうか?
企業は収益を上げる組織です。
「今日は良い天気ですね。」「ちょっとお茶入れます。」とプライベートなことを分単位で囁くことが業務効率を向上させるとは思えません。
分報というものには業務中囁き続けることが目的化されてしまうリスクがあるのです。
これに加えて同調圧力が働き、レスポンス出来ないことで逆にストレスを感じる従業員が出てくるかも知れません。
もし孤立感を抱かせないなど、従業員のメンタルケアを意識するならば毎日朝礼代わりにオンラインミーティングをすれば良いでしょう。
また、同僚と繋がっている方が仕事が捗るというのなら就業中は常時カメラオンにし続ければ良いでしょう。オフィスにいるときは常に上司、同僚の目に晒されているわけですから。
もう一度言います。
コミュニケーションは量より質。慣れるより習え!
同僚と空間を一にしないテレワークではコミュニケーションを確実なものにすること、すなわち質を向上させることに注力してください。
それが出来ないのであれば、リアルスペースであるオフィスでの勤務に戻すべきです。
コミュニケーションを図るうえでリアルに勝るものはありません。
人間は他人と言語(言葉)、非言語を使い通じ合う生き物。たとえ会話をしなくてもリアルスペースでは顔色、姿勢、動作、声のトーンなど非言語情報を無意識のうちに感じ取ります。
リーダーである会社経営者はこれらの言語、非言語情報を感じ取り、部下たちにコミュニケーションを試みなければなりません。
【本日のまとめ】
・コミュニケーションは量より質 慣れるより習え!
その質を高める順序は以下の通りです。
①リアルスペース
②(テレワーク中)常時カメラオン
③(テレワーク中)定時にオンラインミーティングを行い、しっかりとしたコミュニケーションを図る
よってプライベートの囁きを含む分単位の報告を求める分報は百害あって一利なしと言えます。
コミュニケーションコンサルティングはコミュニケーションの向上を通じあなたの会社をサポートいたします。